別冊マーガレット '2013 6月号 君に届け
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別冊 マーガレット 2013年 06月号 [雑誌] |
『君に届け』 あらすじ 進路についてのストーリー |
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集英社 |
『…すこし さみしいけれど
みんな 前を向いて歩いてるんだ』
教室で、風早の背を見ながら爽子は思う。
『風早くんは いつから決めてたのかな
「いつから」
「何を思って」────』
爽子は『……… 聞きたい事いっぱいある』と胸の内で呟いた。
『もっと ゆっくり喋りたいな
風早くんと───』
授業が終わり、大雪が降る中、
雪かきがある風早が足早に帰るところだった。
「が… がんばれー!!」と面と向かって言いつつ、かげながら応援の爽子w
風早は「俺 ちょっと今日ダッシュで帰るわ!!」と言った風早は、
一瞬じっと爽子を見つめると、「また明日!!」と嬉しそうに破顔する。
爽子も「うん!」と笑い返した。
『明日があるって いいな』
その時、爽子は「………………」と───。
その頃、やのちんはケントの掃除当番が終わるまで、
「じゃ 待ってるね」と約束していた。
じー、とやのちんを見つめ、嬉しそうににこにこするケントに、
「も… も~~~っっっ どんな顔すりゃいーの」と、
やのちんは大変に照れながら、赤面中。
「こんなかおーーーー♡」とのたまうケントを、
「早く そーじ いけっっ」と言いながら、どかっと叩いては喜ばれる(笑)
ケントを送り出したやのちんは、
「…あれ」と、爽子が帰らなかったことに気がついた。
「爽子 帰んないの?」
「うん ちょっと荒井先生と話したくて」
「ピンと?」
「………
どうして先生になったのかなって」
「…ふーん」
職員室のピンに爽子(&やのちん)が行くが、
「は? 話?
いんだけどよ 時間ねーな
このあと 面談に部活だからよ」
と、ピンが答える。
「そ… そうですかー」と爽子。
「いーじゃんそんなの とっとと終わらせれば
どーせ ろくな事言ってないんでしょ」とやのちん。
「おまえ実にとんでもねーな」とピン。
ピンは残念そうな爽子に目をやり、唐突に言う。
「俺 今日 夕メシラーメンなんだよ」
「きーてないんだけど 自慢?」
ピンは爽子を見て、ニヤリな具合に笑って言った。
「来いよ おごってやる」
「えっ あの…」
「やめときなよ
1度恩着せられたらとんでもない見返り求められるかもよ」
「ついでにお前も来い」
「ええーー!?」
そしてラーメン屋さんは勿論、「徹龍軒だぞ」なのだった。
夜、徹龍軒のカウンターで並んでラーメンを食べるピン・爽子・やのちん。
店の中では水を得た魚のようにてきぱきと、
3人分は働く気のようなちづが働いていた。
「ほんとに向いてんじゃねーか ラーメン」と口にしたピンに、
爽子はドキドキしながら、口を開いた。
「あの… 先生は……………」
「ん?」
「……………
どうして先生になったんですか?」
ピンが爽子の方を向く。
「そ 尊敬する恩師とか…… いたんですか」
「ああ ま いなくもねーな
俺の高校時代の野球部の監督 ふつーに教師だったからよ」
「……尊敬… してたんですね…」と感激したように爽子は呟く。
「あのよ
俺 別に 尊敬されたくて教師になったわけじゃねーぞ」
「爽子に尊敬されていい気になってたじゃん」
「そりゃ まあなんてーの…
されようとしなくても 自然に… されちまうもんなんだよ…」
ウンウン、と頷く爽子。
「へーー…」と、限りなく遠い目になるやのちん…。
「俺はな 面白いからやってんだよ
尊敬されるより うやらましがられてーな」
「教えるのが… 面白いんですか?」
「教えるなんて思ってねーなー」
「教えろよ! 教師なんだから!!」
そして「のびんでしょ ラーメンが!!!」と、
話してて手が止まってる3人にハラハラなちづだった(笑)
ピンは爽子ややのちん、ちづの方に目を向け。
いつもより真面目そうな顔で口にする。
「おまえら見てんの面白いよ
おまえら ばかだしよ
変なことやるし あきねんだよな
まっ 3年だからいんだよな!
5年とか6年じゃなげーからな!!
3年で どう変わっていくのか
どう考えて 何をすんのか」
そして爽子へ語りかける。
「黒沼 おまえ
自分で自分のこと 変わったと思うか?」
「……… はい」
「いい方に変わったと思うか?」
「……… はい」
「おう よかったな」
「みんなが… いたからです」
「そーだな でも
みんなとそばにいられる環境は
おまえも作ってきただろう
矢野は─── これからだな」
「何よ!!」
ピンは、はははと笑って言った。
「みんな これからだよ」
「もちろん 俺もこれからの男だ!!」
「きーてないし」
「野球にしろ 教師にしろ
結局 俺は面白いのがすきなんだ
自分が何を1番強く思うのか
何を求めるのか
………
何やったって 底にあるのは大体同じだ
俺の大事なことは
何が自分にとって面白いかだったんだよ」
「ごっそさーん」とピン・爽子・やのちんが徹龍軒を出ると、
この季節には珍しく晴れていて、星空が見えていた。
また、丁度ランニングする龍が店の前に現れる。
龍は戸口から、店内のちづの姿を確認すると、
ピンにぺこりと頭を下げてまた走り出し、ランニングへと戻った。
爽子は「…あの…」とピンに口を開く。
「やっぱり
私 先生を尊敬します」
ピンが「うやらましーか?」と問うと、
爽子は「…… はい」と答えた。
帰り道。
爽子と方向が別れ、ピンとやのちんが並んで歩く。
「おう おまえよく来たな」
「あたしは別にー…
…爽子が心配だっただけで
ピンがまた ろくでもない事吹聴すんじゃないかと思って!」
「理由はなんにしろ 動いた事が重要だ」
「…明日にはぺろっと
「理由の方が重要だ」って言いそーね」
「おう! よくわかってんな!!」
不意にピンが言う。
「矢野 これからだ」
やのちんが顔を上げ、ピンの方を向く。
ピンは優しげな表情でやのちんを見つめてた。
「これからだよ」と、またピンが言う───。
帰り道。
『……自分の 底にあるもの───』
1人になった爽子は風早へ電話する。
「…もしもし? 風早くん?」
<< 黒沼!? >>
「ごめんね 急に…
…今ね 真田くんちのラーメン食べて帰り道なんだ」
<< えっ!! 近い! 1人で!? >>
「あやねちゃんと荒井先生と… そして今1人
…に なったから電話… かけちゃった…」
<< えっ ピン!? なんかあったの!? >>
「ううん
私が荒井先生の話を聞きたくて────
……… 進路のこと──── 考えてて…」
<< ……… うん! >>
電話しながら、爽子は夜空を見上げる。
「……… あのね
声が 聴きたくなったの
…星が綺麗だよ」
爽子の背後から、ザッザッザッと雪の上を駆ける足音がした。
「…黒沼!!」
名前を呼ばれ、爽子が振り向くと風早がいた。
寒い中、走ってきたのか、頬が赤い。
「追いついた!!」と風早は満面の笑顔を浮かべた。
「は… 走ってきたのー!?」
「うん!」
「もしかして雪かきの途中だったー!? 大丈夫ー!?」
「うん! かお みたくて!」
風早は「みれた!」と微笑んだ。
爽子は、今までのことを思い出す。
『風早くんは ずっと
いつも走って 私のところに来てくれる
いつも 笑顔で ずっと───…』
「あのね 風早くん…
風早くんと 今度ゆっくり話がしたい」
『そうだ 私はずっと
ずっと変わらなかったんだ
ずっと 1番強く思っていたこと』
「進路とか 風早くんの話 …いっぱいしたい…」
「うん! 俺も!!」
伏し目がちに、爽子は思う。
『私は ずっと思ってきたんだ
どんな時でも 誰とでも──────』
女子トイレで、ちづとやのちんに。
取り囲まれた女子達に。
てらいなく泣いた時。
風早に、想いを伝えた時───。
爽子は風早に手を伸ばし、そっと手を握った。
「……だいすきだよ………」
『「どうやって言ったら 伝わるんだろう」
………「どうしたら」
「相手に届くんだろう」』
翌日。
ピンは風早へ問う。
「一応確認すっけど 今日の三者面談 おまえんち母ちゃんだよな?」
「…… 父 です」
ピンはゲキレツ(風早父)が来る、と嵐の予感に震え上がった(笑)
そんなピンをよそに(笑)
爽子は「今日… 終わるの待ってていい?」と風早に言い、ラブ空間w
最初の面談は龍だった。
「───で おまえは 進学希望だな?」
「はい」
龍パパが尋ねる。
「ピンちゃん うちの子大丈夫なのかね成績」
「ああ
…秋の大会ん時 知ってる顔があった
見に来てたぞ 大学のスカウト」
龍は「結果出せ」と言ったピンに、「はい」と答えた。
立ちのぼる迫力のまま、風早父がやって来る。
教室に入る風早父の姿を見かけた爽子は、
あいさつできなかったなー、と残念そう。
『このへんで待っててもいーのかな?』と、
爽子は廊下で邪魔にならないかと思っていると、
2-D教室から、どかっっっと殴る音が!
殴られたのは風早。
驚くピン。
「こんの…
くそばかたれがーーー!!!」
廊下まで聞こえた風早父の声に、
爽子も『え!!!』と驚いて───!